ひびき/木立 悟
 



夜から朝へと染まる荒れ野が
蒼と白にじっとしている
遠く刃物の音をたて
雲はひとつずつ過ぎてゆく


鉄が鉄を撫でている
蒼と白は寄りそって聴く
凍えてゆく声
あたたまる声
からくりを持たないからくりの声


見えない約束が
浜辺に座り 波を見ている
雲の刃の光を見ている
波の端は荒れ野に至り
ふたつのざわめきにかがやいてゆく


突き出た岩は
残された文字
土に洗われ
残された意志
幾つもの野を過ぎ
つづきゆく意志


誰かを撲った手首から
明けゆく空へと立ち昇る白
見上げるまなざしに歌は降るのに
何も映さず流れ落ちる
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