みかん/藤原絵理子
 

スーパーの袋にいっぱいのみかん
向かいの席に座ったおじさん
着いた駅のホームで倒れた
淋しかった夜更けのホームが
めいっぱいの 太陽の色にあふれて 


スマホで救急車を呼ぶ人 
駅員に知らせようと走る人 
明るい太陽を拾ってあげる人
あたしはとっさに 持っていた傘を 
ホームの黄色い線のうえに置いた


明るい太陽が ひとつたりとも暗い線路に落ちないように 
お孫ちゃんの 小さな手の中で輝くはずだったのかもしれない
亡くなった奥さんの お仏壇を飾るはずだったのかもしれない
たくさんの 明るい太陽


うっすらと 額に血を滲ませて 
おじさんは幸せそうに横たわっている 
たくさんの太陽に囲まれて

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