レティシア 青い花を探して/石瀬琳々
雨が降っている、と 長い髪を翻して駆けていった
レティシア 君を探して見知らぬ夢をさまよっている
あれは君だったの 夢のなかでそっとくちづけをかわした
誰もいない図書室で本をひらいて
陽だまりに読みふけった異国のものがたり
それとも微睡にふたりで夢に見た青い花だったろうか
空の色を映した花、どこかに咲くその花を
いつか想像してぼくたちは泉を飛び越えた
青い花、君の目のように、雨のように、
雨宿りをした木陰は君の心臓のように静かだったね
レティシア 君は素知らぬふりで目のなかに愛を飼う
かなしい時に君は泣かなくてうれしい時に涙をこぼす
小鳥のよ
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