すべての夜は悲しみの膝元にあり/ホロウ・シカエルボク
アパートメント二〇二の壁の裂傷
フラグメントの終焉と彼女の吐瀉物
ポリスの出動はいつでも間に合わない
彼は絶望の寝床にうずくまったまま
ダイヤルの記録は悲鳴のような声ばかり
テーブルの上のタロットは幸せを予言していたのに
雨とも霧ともつかぬ朝だった
ジョギングをする連中はパーカーをすっぽりとかぶり
車は憎まれ口の変わりにハイビームにしていた
どこかでラジオが大音量で流れていた
いかさまジャズをやっていたころのスティングのヒット曲
路肩の植込みのベッドで夜のうちに撥ねられた猫が
砂糖菓子のような瞳を見開いたままにしていた
そんな景色を見ながらよろ
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