遺書の切れ端/凍月
 



僕は彼女を名付ける事にした

彼女は僕の天秤が
どちらに傾くのか知らない

僕は彼女の知る真実から
不確定だといって目を背けた


嘘は
特定の誰かを騙す為に
鍵は
特定の誰かが見れば繋がるように


コインは忘れられた運命の空間を
目眩がするくらいゆっくりと落ちる
その間、一回転もしない
(それでも、真っ直ぐ落下するコインなんて無い)

沈黙は僕のために
或いは其の冷たいコインのために


だから僕は
彼女に名前を渡す事にした
−−砂時計が動かなくなる前に





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