虚構の庭/管城春
生きたつもりはなかった。この連鎖に組み込まれたのは硝子
を割らないかぎり抜け出せないとあなたが教えてくれたから
で、パリン、パリンと時折響くその音が誰かの脱落を知らせ
て、そのことに安堵している。わたしたちを覆そうとする悪
しきものたちに矢を放って台詞を違わずに言えるのなら、資
格はまだ失われていない。電波塔のいちばん上からぶら下が
っている男たちについては、ずっと考えたことがない。四六
時中目を回しているような鳩の群れにつつかれてあるひとは
眼が爛れ、あるひとは腹が裂けた。わるい部分にはモザイク
がかかるから、直視することはない。
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