Body/opus
右目が腫れていて
よく見えない
まぁ、そうだよなとか思いながら
薄汚れた道を歩く
遠くの方で
「ボー」と
何かの音が鳴っている
風に煽られて
火照った身体が
冷めて
また温まる
ウィスキーの香りが鼻に残り
気持ち良さで
眠ってしまいたくなる
ぼやぼやと揺れる街灯の下
黒い犬が此方を見ている
赤い首輪を嵌めて
座っている
近寄り頭を撫でると
尻尾を振る
頭の温もりが
手のひらに伝わる
「満足か?」
告げられた言葉に
コクリと頷く
街灯がパチパチと火花を散らす
右手がふっくらと腫れ
ドロリと内蔵が溶ける
右目から血が零れ
全身に痛みが走る
疼くまり
犬を抱きしめる
犬が左頬を舐める
ぱーと、
世界が白くなる
体が包まれ
何も見えなくなる
何も感じなくなる
何もかもがなくなる
そして、
何もかもがないということも
わからなくなるのだろう
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