さるすべり/藤鈴呼
 


猿も木から落ちるかどうか
私が見た 赤い尻は 川下りの最中だった
橋の上だった
木では無かったから 解らないだなんて
想像力の 欠如

ケツをまくっても 
欠如してしまった思想は
元に戻らない

ひらめいたスカートの奥に流れた雫が
ポタリと落ちて 猿と同化する

四つん這いになって走る気持ち
二足歩行のままでは 解らないから

逸る気持ちを抑えて
自らを 犬と思うことにした

猿と呼ぶには ちょっと
賢さが 足りぬ気がしたから

どんな木に 登ってみても
補えぬ分は 遠吠えに 変えてしまおう

大声を出すばかりでは
何の足しにも ならない
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