残り香/あおい満月
 
く。
傷口だけがひろがっていく。
血が、何かの足元をすり抜けていく。
何かは見えない。

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残り香だけをのこして
あの人は消えた。
繋がっていたはずの手をほどいたのは私だ。
愛という、
あまい残り香を残して。
今でもあの箱のなかでは、
甘い想い出が、
自己を忘れた犬のように、
くるくると回っているのだろうか。
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