看取り(3/3)/吉岡ペペロ
 
うに気をつけながら、すこしだけ身を前に倒した。息子の手に力が入った。幸福だと思った。
母国語で居場所という意味のいまのぼくの仕事。夜、死んでゆくひとを見守る仕事。ちいさい手でぼくの手首をつかむ息子。ぼくも風を顔に浴びていた。
「わっ」息子が叫んだ。
息子が支えきれなくなって、ぼくはアスファルトに胸を打ちつけた。砂埃が目に入る。鼻にまで入ってきた。
「お父さん大丈夫?」息子がぼくの背中のうえで笑っている。大丈夫に決まっている。
ぼくはそのまま立ち上がって息子をおんぶした。大丈夫だ。ぼくはいま喜んで生きている。








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