虚構の大義/藤原絵理子
 

存在の不安を癒すはずの
名も知れず 闇から生まれ闇に去る運命の
生者よりも はるかに数多い死者を看取った
神が それを許したのか?


大好きな町が 罪のない血に染まった  
夜が真の闇だった 文明のはるか前
あたしたちの血に繋がる人々が
時の彼方で 願っているものは 


幻想は 亡者のひとことで かき消され
要りもしない玩具が 当たり前な顔で
寄生する 夥しい数で押し寄せて支配しようとする


水汲みの少女が泣いている
今日も 誰かの大好きなどこかの町が
無辜の血に染まっている 赤く沈む夕陽に

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