すなやま/そらの珊瑚
真夏の鳥取砂丘には
ただ一本の樹さえなく
にぎわう人と数頭のらくだの黒い影を
その茶色の肌にゆらしていた
運動靴を履いてきたけれど
砂に足をとられて歩きにくい
切れる息
額から滴る汗
照りつける強烈な日光
四方から吹く熱風とそれが運ぶ砂粒
目を開けているのもつらい
一歩二歩
私が歩くたびに砂は
自由自在に沈み 動く
やわらかな巨大な生き物は貪欲だ
大勢の人の足跡さえもあとかたもなく飲み込んでゆく
休むたびにふりかえると
まるで
なにもかもなかったことのように思えてくる
たとえばあの日すなやまのどこかに穴があった可能性を考えてみる
大きな穴に落ちたら
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