憧れの土地/Lucy
 
る前に私は咽てしまった 

休みなく喉が渇くので
羽を畳んで降りたつ孤島は
低い山並み
見覚えのあるくすんだトタン屋根
この島国のこの町の
この家のこのしきたりの上に生まれ落ち
この私の中にずっと居て
一歩も外に出ていない事に気づいた

憧れはことごとく
掌の面で光を亡くし
満ち足りない欠落が
空にぼこぼこと穴をあけていた

憧れを捨て
暫くは
庭先で虫など啄ばんでいたのでしたが
ある日行くあてもなく羽ばたいてみると
翼は力を蓄え
吐く息は言葉となって
空の穴ぼこをひとつづつ塞ぎ
目の前には
見たことのない風景が
私をのせて
どこまでも拡がっていくのだった



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