遡行シ/
たけし
感覚から解放された意識は
記憶を遡行する時流に乗り
浮かび上がり沈み込み
内なる外 外なる内へと辿り着く
(貫入し 浸透し
響き木霊の和音渦巻く)
無数の巨大な星々輝き
私という自我も
輝き全てを静観する一つ星
あらゆる苦痛痙攣
あらゆる喪失麻痺
あらゆる混濁混沌
から
解放され
一時の至福恩寵到来し
さらに未知なる道程を辿る
ベランダでは今頃
律儀に脚を折り畳み
腐り乾いていく蝉の
灰白の死骸が銀の光放ちながら
清澄な芳香を発しているだろう
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