死亡欄/ただのみきや
 
新聞の死亡欄に小さく載りたい
葬儀の予定など一切無しで
ほんの数えるほどの文字
ひとつの死 ひとつの終わり
シンプルで飾りのない
わたしの死 わたしの終わり
事実だけが落ちている


新聞の死亡欄に小さく載りたい
修辞や比喩の旅装束は要らない
普段着のまま「名前」と「死」
知らない人には石ころ並みの文字
知っている人には何かしら
記憶なり 感慨なり 
ふっと 匂い立ち


新聞の死亡欄に小さく載りたい
日曜日なら文芸欄の裏手辺りか
人目通りも少ない紙面の墓場
格調高き論説など何食わぬ
政治経済の騒ぎも馬耳東風
流行にも酷い事件にも無反応 
生者の紙面
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