ペガサス/光冨郁也
 
太陽が隠れ、雨が降っている。
駅から、歩いて帰る途中、
だれもいない、
公園による。

幼いころ、よく公園で待たされた。
雨が降っていても、
寒さで凍えながら、
靴の中が水で濡れても、
汚れた指先で、
小石をつかみ、
地面に落書きをした、
なびく、たてがみの、
いっとうの馬。

公園のそばにある、
ソロバン塾には、
わたしの指を逆にそらせ、
手の甲につけては、
喜ぶ上級生たちがいた。
いつも、塾の授業が終わるまで、
わたしを、待たせている。

雨がひどくなれば、
塾ののきで、
水のはった地面を眺める。
いつまでも雨が、
降っていてくれれば、と。
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