古い観覧車/wakaba
イエローに口をつけていた
突然すごい音がした
ひとつ手前のカップルが乗ったゴンドラが風に煽られて
腐食した金具が千切れて墜落した
耳がおかしくなる音を立てて粉々に墜落した
アスファルトに散らばる残骸
僕らは叫ぶでもなく驚くでもなく
墜落したそれをただぼんやり眺めていた
そして僕は思った
あんなふうに死ねたなら
僕らもあんなふうに死ねたなら
ふたり一瞬で死ねたなら
きっと幸せなんだろうなって思った
つよくつよく思った
このまま観覧車が壊れて
ふたり閉じ込められてしまえばいいのに
そしてすべて朽ち果てて
ふたり残骸の中死んでしまえばいいのに
ああ
僕はいつから駄目になってしまったんだろう
僕らふたりはどこでおかしくなってしまったんだろう
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