歩く羽/木立 悟
 




時間を切り取り
器の内の水の上に置く
ゆうるりと巡る光に
指を ひたす


失くした大きさと
後に得た小ささ
つりあい無くつりあう径を
風が 静かに揺らしている


夜はすぐ近くのように遠く
霧を水に溶かしている
視線は咲かない声
やがて 満ちる


岩の街を
歩いてゆく鳥
背負った時計は皆
むらさきを指している


削り取られた岩のかたわら
刃の羽の地使が居て
応えのない声を拾い集め
径端の花に撒いてゆく


黄緑を回る炎の手
空の角を曲がる雲
割れた色の幾つかを
降らせ降らせ 降らせつづける


暗がりの内
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