僕は寝ているふりをした。/梓ゆい
脈を打つ山型のラインが
平行線をたどった。
手を握り
「お父さん。」と呼び掛ける私の前で。
(父は目を閉じたまま、酸素マスクを着けている。)
力の抜けた手は
時間と日にちを追うごとに硬く・冷たくなっていった。
「お父さん。お父さん。家に着いたよ、早く起きて。」
「お父さん。お父さん。ここで寝てると風邪を引くよ。」
寒くて冷たい畳部屋の真ん中で父はただ眠っている。
「今日は、休みだからあと少し。」と
返事をする代わりのように。
父は、寝たふりをしている。父は、寝たふりをしている。
父は、眠っている。
父は、眠っていた…。
いつしかそれは
慌ただしさと引き換えに
打ち止めの文言を
容赦なく叩きつけた。
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