鉄砲玉の唄/葉leaf
 



鉄砲玉は小さく固められた
他人の罪によって表面を鍍金され
もはや己の言葉を発せない
鉄砲玉は撃ち出された
望まない相手に向かって
望まない高速で
引き金を引いたのは誰だ
引き金を引くように唆したのは誰だ
だがそんな人間は存在しない
責任が曖昧になった集団の混沌が
引き金を引いたのだ

鉄砲玉はその高速に反して平静だ
己は言われのない罪を
今までもたくさん引き受けてきた
どんな不条理もどんな被害も
怒ることなく引き受けてきた
虚栄心に基づく政治的闘争に
己は全く関しないから
虚栄心も自尊心も
気がついたらどこかに置き忘れてきたから
他人の嫌がる荷物を進んで背負う

世の中に事件など何一つなかったと
そこにどんな苦しみや悲しみや怒りがあろうとも
事件など何一つなかったのだと
鉄砲玉の悲劇にはさらなる鍍金が施され
鉄砲玉は標的に撃ち込まれる
標的は叫びたて騒ぎ立て
事件が起きた
俺は被害者だと
鉄砲玉は無表情にそれを聴く
そして鉱物として永遠に生きる

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