境界の意識/たけし
 
図書館の広々としたロビーの椅子に
ぼんやりと座っている僕の意識は遮断されたまま
透明に奥まっていく

ざわめく隣の喫茶エリアからの人々の話し声が
ロビーの高い丸天井に反響しながら
立ち昇っては残響し消えて行く―後から後から

建物それ自体が午後の静けさに浸り
ガラス壁越しの樹木の葉群れの濃緑が
秋晴れの空白に映え艶めき
静謐な気を司り
僕はゆったりと午後の時の流れに解放されていく

部屋の寝床では朝まで荒かった呼吸も
今はいつしか穏やかさを保ち
遮断されたまま朦朧とした僕の意識が
いつのまにか高揚する予感で充満している

静かに 静けさに包まれ
慢性的な眼底
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