沈黙へ捧げる秒針/ただのみきや
 
代は喧噪に満ちている

だが沈黙しか所有を許されなかった
あなたがたの
オトを殺して降り積もった
黄金色の翼はいつまでも叫ぶだろう
純粋に声を持たないまま

泥に根を置きながら花顔を誇らしげに上げた思想が
たったひと夜で首をはねられたとしても
時代が大蛇のようにうねり逆流しても
これこそ自らの意思と酔いしれ踊りながら
体よく踊らされていたと思い知らされる放射冷却の朝も
固い種子として越えて往け
文字よ結び目きつく今は解かれぬまま

銀杏の葉が落ちる
尚も季節の車輪は軋むこともなく
わたしはセンチメンタルの手を取って
冷たい光に息を吹き入れる
展開された喧噪は箱の形へと戻り

聞き分ける耳も見分ける目もない ただ
この墓標のようなものの影は追って往くだろう
時代の沈黙を名指すために



                《沈黙へ捧げる秒針:2015年10月31日》










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