沈黙へ捧げる秒針/ただのみきや
銀杏の葉が落ちる
一葉 また一葉
かすかな気配がする(するはずだ)
木との繋がりを絶たれる
そっと地に触れ横たわる
――オト
わたしには聞き分ける耳もなく
世界は喧噪に満ちていた
叫ぶことを許された人たちが
自由に声を張り上げる
誰かが単純化した
数式のごとく解けるかのように
新しい口紅で縁取ったスローガンを
大勢で声を合わせて
叫んでいる顔は憂いでも
脳は濡れている
地球から滑り落ちる
一人 また一人と
胸を踏まれる冷たい感触とその消失
真空の彼岸へと遠ざかる
虚を突かれた顔 そのままの
――オト
わたしには聞き分ける耳もなく
時代は
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