チューしてあげる/島中 充
は幼稚園からの知り合いである。五年生で初めて同じクラスになった。ケイコはへちまを思わせる間のびした顔。茶色がかった乾いた髪を背中までのばし、それはとうもろこしのひげを思わせるようにうなじの上で束ねられていた。ケイコはみずばなをよくたらしている。幼い時から始終鼻かぜをひいていて、みずばなをなめくじのように鼻孔から出したり引っ込めたりしていた。鼻じるが鼻先から落ちるなと思うとひゅるりと上手に鼻孔に戻した。そして所かまわず、鼻をかんでブーとならすのだった。五年生になるとやはり幾らか鼻汁は少なくなったようだ。ケイコは木登りが得意で、庭の松の木によく登っていた。松の木は8メートルを越える高さがあり、登りやす
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