理由のない虹/ただのみきや
 
覚め切らない皮膚 あまおとの影ふみ
ギターはたどる言葉のない遺言を

心から剥離した音は捨て猫のように理由を探さない
薄物のヒューマニズムを着せてはまた脱がす
週末の脈略は絶たれどこか乾いたまま滲んでいた

くたびれた戦装束を犬の舌のようにぶらさげて
赤さびた言い回しが折れて刺さった秋に懸想する
火によらず燃やし尽くす同罪者としての刺青だった

紫陽花の細く長い死の歌声 犬笛のように
透き通る断末のアリア ヒヨドリは発泡する
往き惑う枯葉の裾に隠れてつま先が向かう先

苦笑に見えるのは日差しのせいか
たなごころの生命線を蟻より小さな虫が歩いている
後ろから鈍器で殴られる予感

光が指紋を残す釣り上げられた魚のように
思考しない旋律が空に錯乱する




               《理由のない虹:2015年10月24日》






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