放課後の家族/吉岡ペペロ
いなと思った。
「そんなの知らないよ」
弟はそう言ってまた寝転んで漫画を読み出した。
「うそ」と言ってわたしはふらふらと起き上がった。外を見た。生け垣いがいなにも見えなかった。
「……ない」わたしは絶句した。竹やぶもなかった。もちろん平屋もなかった。でもちいさな家の窓明かりを見ながら父と母の話し声をたしかに聞いていた。
「お姉ちゃんおかしいよ。きのう殴られたのだって幻じゃないの」
そう言われて熱がひいていくのがわかった。なにかがわたしのまわりでうごめいている。こんな感じ初めてだ。
父と母が暗くなっても戻ってこなかった。こんなことは今までいちどもなかった。
初めてってふしぎなこと
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