放課後の家族/吉岡ペペロ
 
のう男のひとに殴られたのを「転んじゃって」とうそをついた。ほんとうのことなんかいちいち言う必要ないのだ。ちいさな家のことだって、弟に「ほんとにほんとに見たんだから」とは主張しなかった。

夜8時をすぎてふと思い立って弟に駅まで行こうと言った。弟は素直についてきた。
駅の改札はあの頃まだちいさくて蛍光灯はたくさんついているけれど薄暗かった。
その夜は涼しかった。弟のうでがたまにわたしの腕にふれてくる。弟の心細さが伝わってくる。
改札からまばらに出てくるひとはいろんな顔をしてわたしたちをちらっと見てはよけていった。改札をでるとみんなのいつもの帰り道。そこにわたしと弟が障害物のように立っていた
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