明け方/梼瀬チカ
明け方、夢ばかり見ていた
浅い眠りから目覚め
蛇口から漏れる水滴に
自分が映り
規則的に繰り返していく音を聞いていた
外に出ると二月の白茶けた太陽が
瞳に弱く差し込み
踏みしめた足元を照らしていた
小鳥のさえずり以外に
音の無い街の気配に
じっと耳を傾ける
まだ始まっていない朝を
私だけが見つけたと思ったとしても
窓から臨む朝焼けに照らされた家々の中で
それぞれの新しい朝が息づき始めるだろう
ケトルを火にかける音や
テレビの映像や
コーヒーの匂いが
少しづつ街に満ちて
時が回転してゆくのを感じながら
響き合い満ちてゆく音の中
駆け足で私も混じってゆくのだと
一本のタバコをゆっくりと吸い
細く長く煙りを吐き
静かに灰皿に火を消した
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