鍵/マゼンタ
 
トからカッターナイフ取り出し、思い切りそれを切りつけた。切って切って切り刻んだのだ。するとどうだろう、蝶は微粒子のような麟粉を撒き散らし見事なまでの赤のグラデーションの羽をひろげて悠々と僕の頭上を飛び始めた。

「おい誰だ、何をしている!」
振り返ると見覚えのあるよぼよぼの爺さんが立っていた。
「ちょっと、見てくださいよ、今ね、僕、蝶を逃がしてやったんですよ」
「お前自分が何をしてるのかわかってるのか、大切な絵をこんな、、台無しにして」
「台無し?何故ですか、たった今、美は解放されました。完璧です」
「何が完璧だ。紙屑同然だこんなもの」
「紙屑だって?これが紙屑なものですか、いいで
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