人生万歳/ただのみきや
 
蛍火の翳るまで
ああ無論水かけ論を立て板に流しながら
口移しでマロングラッセ
祈りつぶやくようなそぶりで
そっと舌でねじ込むように
いつか骨抜きにしてほしい
おれはもう何年も白骨死体のままなんだ
比喩なんてもう飽き飽きだ
悪い詩人におれは騙された
もう何年も白骨死体のままなんだ
アバラの鳥かごで飼っている
得体のしれないものがある

そんな嘘が
そんな比喩が
憂鬱に夕日が華麗な凶が歯車が
悲鳴を上げてまぐわいながら
本当のことを言っている
心臓が
あなたの耳がそう頷いた
冷たく暗い夜に

さようなら人生あっという間です
万歳しませんか
お国のためでも陛下のためでもなく
会社のためでもありません
万歳しませう自分のために
よくぞここまで生きてきたと
悲劇を喜劇へと書き換える脚本家
爆弾は抱えたままで構わないから

歯車が笑うように鳴いて




                  《人生万歳:2015年10月17日》








戻る   Point(14)