秋の手紙/塔野夏子
 



ひんやりした空気の漂う
澄明な秋のゆうぐれである
蓼のべにいろ
野菊のうすむらさきが
ふるえながら空へと
にじみあがるのである
この小径をゆくと
わたしの肌にも
それらのいろが
ふるえにじんでゆくようである
この手の中で投函を待つ
手紙の中から文字たちが
澄んだ空へと立ちのぼり
すきとおり消えてゆくようである



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