先生へ/ヒヤシンス
 
 夜明け前、小高い丘に登りあなたを待つ。
 眼下に広がる平野に家々の喧騒はまだない。
 はるか彼方を南アルプスの山々が連なっている。
 あなたは今日誰の詩集を持ってくるのだろうか。

 あなたはあなたの意思によって雲を愛した。
 私もあなたの影響で雲を愛する。
 いまだ隠れている太陽が山の稜線を浮き彫りにする。
 空にはうっすらとした雲がたなびいている。

 あなたに会ったら何を話そう。
 自分の好きな詩の話でもしようか。
 それとも私の愛する村の話でもしようか。

 あなたのリュックには切子のグラスと葡萄酒が入っているだろう。
 昼にはパンをかじりながらやはり好きな詩人の話をするだろう。
 希望に満ち溢れた太陽が昇る時、私はまだあなたを待っている。
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