蟹妻/チアーヌ
これから、塩水を作ってやるからな」
風呂場のたらいの中から、蟹の祐子がゆっくりと足を動かしながら僕を見つめている。
僕は風呂場の脱衣所に水槽を置き、ホースで水を入れ、海水を作り、冷凍庫から氷をたくさん持ってきて、水の中に入れた。
そこへ蟹の祐子を入れる。祐子は持ち上げられたとき、泡を吹いていたが、水の中に入れられるとそれも見えなくなった。
「これでよし、と」
僕は満足して、リビングに戻って、テレビをつけた。
次の日の朝、僕はコーヒーを飲んでパンを食べながら、ふと、祐子の食べるものはなんなのだろう、と考えた。そういえば昨日から何も食べさせていない。
これはまずいぞ。
ばたばたと家
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