M teller 在る/世江
 
聞けるわけがない。
「外寒かったでしょ? シャワー浴びて来なよっ」
顔を 目を 君を見て、喋ってるのかな? 俺…
不思議そうな顔で踵を返した君をぼんやりと見送り
目元の雫を拭う仕草をすれば掌は薄く濡れている

世界はいつも 濁って不透明なものばっかりだけど、
君の存在だけが僕に色をくれて 未来を鮮やかにする。
『泣いてる。』『泣いてないよ』『嘘』『ほんと。』
『ごめんね?』『どうして謝るの?』『嘘だから。』
『……な、何が?』『全部だよ。』『ぜんぶって…?』
『此処は夢だから』『ゆめ…』『目を開けてみたら?』
『怖いんだ。 そしたらもう 隣に君はいない気がして』
ふ、とそんな情景が浮かんで また僕は身震いをする
『貴方は綺麗な涙を流すのね?』『僕 また泣いて?』
慌てて止めようにも そんな術 僕は知らない 『無力』
君は一体誰なのか? 痺れて声も出ないくらい 『虚無』
「……」気のせいだ。 足元から崩れゆく僕と 僕の夢…

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