ハンカチ/はるな
岩のうえには君の体温がまだ残っていた
僕はそれをハンカチに包んで持ち帰った
ポケットのなかでだんだんとつめたくなっていくそれを
おそろしくてそのまま忘れてしまった
洗濯屋が(彼はいつも薄汚れた帽子を被っている)、
お客さんこれ入ってたよと持ってきたハンカチはアイロンがかけられ
その分はサービスだからさと笑う洗濯屋を僕は殴り倒したかった
おそろしくておそろしくて忘れることにしたハンカチのしわの一つ一つを
もう思い出すことはできなかった
そもそも最初から覚えていなかったかもしれない
そうして君は死んだ
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