公務員に成れなかったコックローチ /島中 充
た。
「そうか仕方ない、それなら俺がやるしかない」と社長は言い残してプイとそのまま出て行った。
6
目を開いても目を閉じても、目の前がキラキラ光っている。薬のせいだ。結局この町にいては、殺虫剤でわたしの可愛い仲間たちは遅かれ早かれ殺されると思った。可哀そうに、仲間を助けてやらなければと若者は思った。いいや仲間なんかではない、それをはるかに超えた同志なのだ。復讐を誓い合った同志なのだ。愛情すら感じている同志なのだ。逃がしてやらねばと白目をむきながら若者は強く決心した。
その夜、ゴキブリのきらいなレモンのかおりの芳香剤を部屋の四隅から大量に撒いて、地下室から同志たち
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