公務員に成れなかったコックローチ /島中 充
、内密だぞ。」と社長はゆっくり説明し始めた。
「私は先代の社長に認められ婿養子に入って今の地位にある。社長の娘がかわいかったから養子に入ったのだが、養子とはつらいものだ。思わん苦労がある。いまこの会社は先代の放漫経営で潰れそうなのだ。どんなことをしてもわが社の業績を上げ、立て直さねばならない。そうしないと社員は失業し、私の家族も借金を背負って路頭に迷う。それには一番手っ取り早いのは、町中に、たくさんゴキブリがいて、うちの会社の薬剤が飛ぶように売れることだ。そのために君に家を用意する。その家で君はゴキブリを育て、繁殖させ、夜中に車でそこらじゅうにこっそり撒くのだ。ゴキブリだらけの町にするのだ。すば
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