立呑み屋/藤原絵理子
 

淋しさ悔しさを 酔いで溶かして
くすんだ裸電球に 大声で話しかける
焼き鳥の煙で 茶色くなった品書きは
扇風機の風にめくれ上がって 読めもしない


いろんな失敗をして 涙も流れたけど 何も
残らなかった 心の手の中は空っぽのまま
夕暮れに行き場を失った 人々が溜まってくる
明日に繋がっている 疲れを腰に引きずって


傍観者のつもりでいたあたしも
いつの間にか 胎内佛のひとつになって
同じことを求めて ビールの苦さを


暗闇の彼方に 瞬いている かすかな
光を頼りに帰っていく 千鳥足も覚束なく
ゆーらゆら 黒い鞄を揺らせながら

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