Miz 7/深水遊脚
なかった。それでもこれまでの人生で懸命に戦ってきたしこれからも戦うであろうものの姿ははっきり見えた気がした。互いを思いやるきめ細かな優しさに満ちた心地よい時間は、たぶん意識して作ろうとしなければできない。それを破壊するものが人のなかにも、自分のなかにもある。作ろうとする努力を投げ出してしまえば、その瞬間破壊衝動に荷担して、破壊する側を全力でサポートしてしまう。破壊することこそ美しいと考える人もいるかもしれない。関係を壊そうとすることが悪だとして、維持しても仕方のないものを維持するよりは破壊してしまった方が美しいときもある。澄花さんの結婚生活も、私のチアダンス部での活動もそうだった。宮原家の人たちにとっての澄花さんは悪だったし、チアダンス部にとっての私も悪だったのだと思う。でも悪となっても貫き通すものがあり、エゴではなく、自分や誰かの中にある美しさにたどり着こうとすれば、目を反らしていた複雑さは繊細さでもあることを知り、繊細さは包み込む優しさを生み出すこともある。澄花さんが作り出してくれた優しい時間について、飽きることなくいろんな角度から考えていた。
[グループ]
戻る 編 削 Point(2)