気がかり/
春日線香
夕方過ぎに家を出て
魚を買って戻る途中に
なにか気がかりがあるように思う
何だったか思い出そうとして
何のことだったかわからなくて
吹きつけてくる風が
二の腕のあたりにうすら寒い
手提げ袋の中では
包みから血が滲みはじめ
角の部分に溜まっていく
買い忘れはないはずだし
やるべきことは片付けてある
しかし恐ろしいものはいつも
死角から猫のように飛び出してくる
人間の形をした袋の中で
こぼれるものを感じながら
そう思う
戻る
編
削
Point
(4)