Di/stance/角田寿星
 
るがもう
すでに声にならない。遠のく意識のなかでひとりまたひとり私の名
前を呼ぶ声がふたたびきこえてくる。


夕食後に突然なった電話は子どもたちの保育園の同級生の死を伝え
るものだった。「ぱんだぐみのりおちゃんが今朝がたなくなりまし
た」インフルエンザが彼女の命を奪っていった。まだ三歳だった。
電話を受け取った妻にまとわりつくようにしてたあくんが走り回っ
ている。たあくんは「ぱぱ」も「まま」もまだうまく言えなくてた
あくんは微熱が下がらずに昨日今日と保育園を休ませた。
たあくんはぼくに駆けよって鼻汁を垂らしたままの顔を近づける。
ぼくはたあくんを軽々と抱き上げてたあくんは
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