『戦争詩歌集事典』高崎 隆治より、戦争詩を考える。/こひもともひこ
のだが、率直にいえば「自殺」であり「後追い心中」である。「比翼忠魂」などという勝手な表現は虚構で、そういう形でしか「愛」を貫くことができないと一途に信じた戦時下の若き女性の悲劇である。
一般的に、傷病兵の作品は戦闘がいかに激しかったかということと、自身がどれほど勇敢に戦ったか、そして模範的な「忠誠心」の持主であるかという諸点を強調するのが特徴で、極論すれば自身の欠点や弱点を凝視しようとする姿勢は皆無に近い。自己を救済する方法がそれ以外に発見できないからであろうが、戦争体験者による「われかく戦えり」式の回想記が、自己肯定に満ちていることと共通ななにかがそこにあるように思われる。
「死んだ
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