愁思/葉leaf
 



地上からほかのどこかに通じる
風通しの良い扉が一斉に閉じると
秋の始まりだ
秋は閉ざされながら熟していく
密度の高まった空気と光と音楽
みな緩やかに撹拌され混ざり合いながら
ひたすら完成へと昇っていく
秋は創作の完成を目指すきわめて芸術的な季節だ

果物が熟するように秋に病んだ
病むことが一つの成熟であるかのように
秋はただざわめいているが
何一つ私に届かない
ただ秋の昂進のように病は高まって行き
秋からの逸脱のように病から治癒した
病は一つの実りであり
治癒して華々しく散っていく実りである

秋の夜に風が立つ
秋の稠密な結晶がどこかで狂い
分子を組み直すときに発生する風である
秋の夜
結晶はあらゆる角度から闇に侵入され
その整合性を試される
秋の結晶は均衡からわずかに狂い続け
その度に侵入された闇によって解体されるのだ
解体に伴う風に雨粒はその形を正される



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