磨くという行為/
夏美かをる
時だ
台所や居間やバスルームのあちらこちらに
私がこうして刻みつけた
境界の滲んだ輪形の傷
それらがほんのり熱を帯び
煌々と輝きだすのは
決まって家族が寝静まってからだ
だから私だけが知っている
殺伐とした世界の片隅にあって
何かしらざわついている我が家にも
漏らした溜息の数だけ
ひっそりと息づいている神秘的な輪の存在
深層で渦巻いているものの暗さを覆うように
凛とひかめくループの光の、その圧倒的な眩さを
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