犬/
春日線香
子供の頃、森に捨ててきた犬が
数十年かけて戻ってくる
窓の外で鳴いている
ここをあけてくれよう
あけてやらない
もし窓を開けたが最後
わたしのほうが犬になって
寂しい荒野をさまようことになるからだ
そういうことがわかってもなお
いや、そういうことがわかるからこそ
今日も森に犬を捨てに行く
森は犬でいっぱいだ
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