秋の本/葉leaf
私は人のいない秋の公園でゆったりと本を読んでいる。それは平凡な一人の女の人生をつづった本である。拙い描写に浅い心情把握。まるで書き散らされた日記のよう。だが秋に読むにはこのような余白のある物語がいい。私は一人読み続け、泣いたり笑ったり感動したりする。
私の人生もどこかの誰かが人のいない公園で読んでいる。私はこれまで読み手を意識して生きてこなかったのできっと恥ずかしいことばかりだろう。だが読み手はそんなことも全て、秋の美しい思い出の一つにしてしまう。私の人生はどんな波乱があろうと、秋の読み手によって美しい物語になる。
こうして秋はみんなの人生を美しい物語として救済する。一人で生きていれば地獄でも誰かに読んでもらえれば美しい。秋は優しさでいっぱいだ。他人を認めてあげる優しさでいっぱいだ。そんな優しい相対化のために、地上には人のいない公園が沢山なければならない。
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