空が落ちている。/
梓ゆい
渡しそびれた手紙が
一冊の本に挟まっている。
「必ず届きますように。」と手を合わせ
何冊かの本と共に
庭の片隅で火にくべた。
燃え残ったページが
秋の風に吹かれ
くるくると足元をすり抜ける。
空を見上げれば
白い煙の残像が
糸電話のように伸びていた。
(お父さん・お父さん。)
私は携帯電話を取り出して
今は亡き父の番号へと
無言で発信ボタンを押す。
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