アイスクリーム/ありか
た自由な宮殿での生活は
想像もつかないほど 虚構で満ちている
終わらない丘にきみは立っていた
帽子を取り
なにも出てきやしないのにほほえんで
理由をきく隙すら与えず
自分の影を踏んでいる
靴底の色は黒に違いない
わたしは抹茶アイスなら消化できるので
それを食べながら
きみとは夢でしか会ったことがないことを
思い出しかけて泣いた
吹けない口笛を吹こうと口をすぼませると
ねこどもの物語へと流れてゆく
ねこはそろって滑走路を走りはじめ
月の縁を蹴る
飛びながら肉球を 黒い肉球を
空にいくつもいくつも押し当てて夜をつくる
空は黒く染まって
ようやくわたしは布団にはいることができた
きみに会いにいくのだ
いつまでたってもバニラ味を注文するきみに
今度こそその理由をきくために
一日のうちに凌駕しなければならないこと
一夜では卒業してはならないこと
その境界のただなかにいる
きみに
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