いざなう声がする/ただのみきや
旅にでよう
おれは空っぽの植木鉢
枯れた川底の石っころ
風の一筆書きなのさ
蜃気楼から現れた古代人が
すべてで触れて 無知のまま
時を違えた恋人を追うように
たった一人 旅をしよう
帰るつもりもない巡礼なのさ
そうして行った先々で
手紙を書こう
誰に宛てるでもなく
始めも終わりも順番もない
手紙を書こう
どこかで誰かが読んだなら
古びた文字の向こう
地平と時が融け合う辺り
小さな影法師が見えるだろうか
愚者と賢者の二人羽織
喜劇と悲劇の二人三脚が
時にはお天道さんもはねっ返す
ちっぽけな水たまりでいい
一瞬照らせば満足さ
マッチ棒みたいにシュッとね
残すとはそうゆうこと
名前も言葉も煙でいいさ
《いざなう声がする:2015年8月1日》
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