取り返した靴/Neutral
われた僕は
野宿出来る所ならあるよと案内されて歩いていく
木の枝や蔦の絡み合う廃屋
住居として使われていた頃は
おしゃれな屋敷だったのだろうが
僕は苦笑いで断った
やがて夫婦が案内したのは何もない更地
これにロープや立て札があれば
駐車場のようにも見えただろう
こんな所で一晩過ごせというのかと
僕は猜疑と不安と恐怖を覚える
歩き出してみると
木陰の下で雨粒のように身体に当たるものがある
それは見たこともない虫の群れだった
ブウウン ガサガサ 気味が悪い
虫嫌いの僕は立ち竦み
向こうで夫婦が呼ぶ声との間で葛藤する
不意に思い出したのは母の顔
家で母さんが待っている
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